クリストファー Vol.12
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看護学部 教授 慢性看護学02がん看護から始まった研究 大学4年の時、私は小島操子先生のご指導の下、卒業研究に取り組みました。研究テーマは術前の不安に関することだったと思います。臨床の場での看護実践を経験することなく、大学卒業後そのまま大学院へ進学しました。しかし、研究疑問が看護実践に根差しているのではないことから、研究への取り組みは行き詰ってしまい、1年間大学院に籍を置きながら、臨床経験を積むこととなり、がん専門病院の頭頚科で毎日日勤をしておりました。頭頸科は耳鼻咽喉科と口腔外科の領域のがんを治療する科です。頭頚科の患者さんの中には、かなり厳しい病状の方や治療の影響を大きく受けている方がいらっしゃいました。当時は手術が治療の主流でしたので、上顎、下顎、舌や口腔底等を腫瘍と一緒に除去し、顔面に大きな欠損が生じていました。頭頚部には息をすること、食べること、話をすることの重要な部分があります。がんを治すことと引き換えに、人が生きていくために重要な機能を失い、また容貌の変容が生じるということがありました。それでも患者さんは治ることを信じて治療に臨んでいました。このようながん患者さんの現状から、研究テーマを「頭頚部がん患者の看護−身体的変化の受容過程と看護介入のあり方−」としました。終末期ケアへ向く関心 大学院修士課程を修了後、そのまま同じ病棟に就職しました。病棟には頭頸科の他に放射線治療部の病床もありました。放射線で治癒を目指せる病状の患者さんもいましたが、少しでも腫瘍を小さくし、緩和を目的とする患者さんもいました。病状は厳しいものがありました。また、手術で切除できない、再発してしまったという頭頚科の患者さんもいらっしゃり、病院で最期を迎えることもありました。当時はまだ緩和ケア病棟、ホスピスが少ない時代でした。術後の患者さんをケアし、退院する患者さんを見送りながら、終末期にある患者さんとご家族への対応をしていました。病棟で取り組む研究も終末期にある患者さんの安全安楽に関するものが多く、現場の看護師たちは安らかな看取りに至るようなケア研究の紹介「生き生きと働く訪問看護師」の応援隊として、教育研究を続けていきたい本田 彰子

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