グローバルナビゲーションへ

本文へ

ローカルナビゲーションへ

フッターへ


教員リレーエッセイ

ホーム >  教員リレーエッセイ >  がん細胞に魅了された私

がん細胞に魅了された私


2021年8月30日更新
 私は大学4年生の時に母を亡くしました。診断名は子宮体がんです。当然のことながら、母親を奪っていった病気ですので、がんという病は非常に恐ろしいものだと考えています。
 そんな、がんによって母親を亡くした私ですが、がん細胞のある一つの特徴には目を見張るものがあると感じております。それは、ワールブルグ効果という特徴です。
 通常、人間の細胞は酸素が十分にある状況下では酸素を重要なエネルギー源とします。しかし、がん細胞は酸素が十分に存在する環境下にも関わらず、酸素ではなく糖を重要なエネルギー源として活用します。糖によるエネルギー産生は持久力に欠けるため、一見効率が悪いようにみえます。ではなぜ、がん細胞は糖を使うのでしょうか。これには諸説ありますが、がん細胞が増殖するためには、様々な物質が必要となります。それらの物質は糖をエネルギーとして活用する過程で、作られることが分かっています。また、酸素よりも糖の方が血管から遠くの細胞まで届く(拡散する)ため、がん細胞は解糖系(糖を使うこと)を選択しているのではないかといったことも言われています。
 このようにがん細胞の目的は不明ですが、与えられた環境で、選択し、効率的に、存在しているのだと思います。がん細胞の代謝についてはこれからも注目していきたいと思います。