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教員リレーエッセイ

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「ことば」を取り巻く変化のなかで


2024年5月10日更新
 言語聴覚士を目指す学生さんに必ず尋ねるのは、「なぜ、言語聴覚士になろうと思ったのか?」という質問です。私自身は、大学卒業後に障害者施設で、身体やことばに障害がある方の日常生活のサポートに携わっていました。ことばでのやり取りが困難な方と、どのようにコミュニケーションをとったらよいのかと試行錯誤の日々でした。大学を卒業するまでは、「ことばでのコミュニケーション」は当たり前のことでしたが、ことばの発達に障害がある方や、脳卒中などの病気によって、それまで話せた方が「わかっているのに、・・ことばが出ない」という症状に悩んでいることを知りました。「なぜ、ことばの障害が生じるのか」、「どうしたら言葉が話せるようになるのか」ということに興味を持ち、言語聴覚士を目指すことを決意しました。
 成人で発症することばの障害の多くは、脳の病気と関連しています。脳の病気によって生じることばの障害のひとつに失語症があります。失語症の方は、国内に50万人程度(日本失語症協議会)存在すると類推されています。これまで、失語症の方は、自身の障害をことばで十分に伝えることが困難であり、必要なサポートを受けることができない状況にありました。こうした失語症の方の抱える問題に対し、近年では、障害者総合支援法のもと失語症者向け意思疎通支援事業(平成27年厚生労働省)が全国的に推進され、失語症の方をサポートするための会話パートナーの養成が進められています。
 私が失語症の方のリハビリテーションを志したころは、このような社会的支援が全国規模で展開されることは、想像もできませんでした。近年、AIをはじめとした科学技術の発展により、ことばをサポートするツールが普及し、コミュニケーションのあり方も変化しています。こうしたなか、「言語聴覚士ができることは何か?」を改めて考える日々を過ごしています。