多角的な視点で転倒予防の研究に努める
2025年1月10日更新
皆様は、高齢者の転倒が1年間にどれくらい発生しているかご存じでしょうか?高齢者(65歳以上)の転倒発生率は約20-30%であり、転倒者全体の約10%が骨折などの重大な外傷につながります。外傷が生じなかった場合でも、転倒に対する恐怖心が強くなったり、転倒しないように過度に行動を制限したりすると、身体を動かす機会が減少し、心身機能の低下から、さらに転倒しやすくなる悪循環を形成します。特に、日常生活で介護が必要な要介護高齢者は、一般高齢者より転倒しやすく、転倒による悪影響を受けやすくなりますので、要介護高齢者の転倒は深刻な問題です。
要介護高齢者の転倒を予防するためには、どのよう対策が効果的なのでしょうか。転倒予防対策の一つに身体機能を高める運動が推奨されていますが、運動だけでは転倒予防効果は認められておらず、有効な対策は示されていないのが現状です。そこで私たちの研究室では、転倒の原因を明らかにするために、身体機能以外の要素にも着目した研究を行っています。具体的には、高齢者に生じやすい栄養不良、睡眠障害、排便障害、慢性疼痛、うつ症状など様々な要素を調査し、転倒の原因を多角的に明らかにしようとする試みです。
私たちが行った「睡眠障害の研究※」を紹介します。睡眠障害の一つに睡眠効率の低下という症状があります。睡眠効率の低下とは、眠れずにベッドで横になっている時間が長い状態ですが、私たちの研究で、睡眠効率の低下している方は転倒しやすくなることが明らかになりました。睡眠効率の低下している方がなぜ転倒しやすいのかは定かではありませんが、十分な睡眠が取れていない状態では日中の覚醒度が低下しますので、ふらつきの原因になることが考えられます。
このように、要介護高齢者は様々な原因が複雑に絡み合って転倒しやすくなりますので、転倒予防対策は、運動だけでなく、睡眠障害や栄養不良などに対する対策を併用して行う必要があるのではないでしょうか。私たちは、運動、栄養補給、睡眠指導など複数の対策を併用した転倒予防対策を提案し、要介護高齢者の転倒予防効果を検証する新たな研究を行っています。私たちが提案した転倒予防対策が効果的なのかどうかは研究結果が示されるまでわかりませんが、対象者の利益に少しでもつながるよう研究に励んでいきたいと考えています。
※「Sleep efficiency affecting the occurrence of falls among the frail older adults」
Yoshimoto Y, Honda H, Take K, Tanaka M, Sakamoto A.
Geriatr Nurs. 2021 Nov-Dec;42(6):1461-1466. doi: 10.1016/j.gerinurse.2021.10.001. Epub 2021 Oct 14. PMID: 34656862.
要介護高齢者の転倒を予防するためには、どのよう対策が効果的なのでしょうか。転倒予防対策の一つに身体機能を高める運動が推奨されていますが、運動だけでは転倒予防効果は認められておらず、有効な対策は示されていないのが現状です。そこで私たちの研究室では、転倒の原因を明らかにするために、身体機能以外の要素にも着目した研究を行っています。具体的には、高齢者に生じやすい栄養不良、睡眠障害、排便障害、慢性疼痛、うつ症状など様々な要素を調査し、転倒の原因を多角的に明らかにしようとする試みです。
私たちが行った「睡眠障害の研究※」を紹介します。睡眠障害の一つに睡眠効率の低下という症状があります。睡眠効率の低下とは、眠れずにベッドで横になっている時間が長い状態ですが、私たちの研究で、睡眠効率の低下している方は転倒しやすくなることが明らかになりました。睡眠効率の低下している方がなぜ転倒しやすいのかは定かではありませんが、十分な睡眠が取れていない状態では日中の覚醒度が低下しますので、ふらつきの原因になることが考えられます。
このように、要介護高齢者は様々な原因が複雑に絡み合って転倒しやすくなりますので、転倒予防対策は、運動だけでなく、睡眠障害や栄養不良などに対する対策を併用して行う必要があるのではないでしょうか。私たちは、運動、栄養補給、睡眠指導など複数の対策を併用した転倒予防対策を提案し、要介護高齢者の転倒予防効果を検証する新たな研究を行っています。私たちが提案した転倒予防対策が効果的なのかどうかは研究結果が示されるまでわかりませんが、対象者の利益に少しでもつながるよう研究に励んでいきたいと考えています。
※「Sleep efficiency affecting the occurrence of falls among the frail older adults」
Yoshimoto Y, Honda H, Take K, Tanaka M, Sakamoto A.
Geriatr Nurs. 2021 Nov-Dec;42(6):1461-1466. doi: 10.1016/j.gerinurse.2021.10.001. Epub 2021 Oct 14. PMID: 34656862.
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