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教員リレーエッセイ

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全ての高齢者介護施設が「安心して暮らせる場」になるために


2025年2月10日更新
 約30年前、私が働き始めた頃の高齢者介護施設は、カーテンのみで仕切られた4人部屋が標準仕様で、職員配置も低い水準、介護福祉士や社会福祉士資格を持っている職員はわずかでした。認知症ケアに関する研究も進んでおらず、認知症の方の行動・心理症状(BPSD)に適切な対応ができず、事故防止のために車いす等に身体を固定する、いわゆる身体拘束も当然のように行われていました。また、今であれば「虐待では?」といわれるような関わりも散見されました。そのような中、私は、入所者の権利擁護を担うソーシャルワーク職(生活相談員)として、幾度となく多職種の方々とケアの質の向上に関する議論を重ねました。そうすることで、徐々にケアの質が向上していった経験は、今でも自分自身の専門性のベースになっています。
 昨今、高齢者介護分野における認知症ケアの専門性は飛躍的に向上し、高齢者介護施設におけるケアの質も大きく進歩しています。しかしながら、高齢者介護施設における虐待は、今もなお、深刻な問題となっています。私は、2018年度から、介護現場で働く仲間とともに、虐待予防プログラムを開発するための研究※1を開始しました。このプログラムは、施設職員自らが虐待の前兆と言われる不適切ケアに気づき、具体的改善策を考えるきっかけづくりにつながる研修プログラムです。
 大学教員になって14年、現場からは離れましたが、研究職として「全ての高齢者介護施設を安心して暮らせる場にしたい!」、「そこで悩み、苦しんでいる方々(利用者・家族・職員)の応援がしたい!」という思いをもって、現場で働く仲間とともに研究活動を進めていきたいと考えています。

※1 「介護老人福祉施設における虐待予防プログラムを用いた研修実施と効果検証」
   https://seirei-univ.repo.nii.ac.jp/records/2106