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教員リレーエッセイ

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ひとは「作業」を行うことで生きる意欲や活力を得ています


2025年3月10日更新
 人が日々の生活を営むためには、生理機能、運動機能、認知機能、心理的機能、社会的機能などの基本的な機能が必要です。この機能がうまく働くことで、動作となり(手や指を動かす)、動作に目的が加わると行動となり(調理をするために包丁で食材を切る)、複数の行動に個人的・社会的意味が加わると、人が行う日々の生活の構成要素となります(家族と共に食卓を囲み、団らんの時間をもつ)。一般的にリハビリテーション専門職とは、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士の3職種を指しますが、共通する役割は、これらに何らかの不具合が生じた時に機能の改善を図ることです。ただし、それぞれ得意なことや守備範囲が異なりますので、ここでは作業療法士の視点を少しご紹介したいと思います。
 作業活動への取り組み方は、その人の性格や価値観が反映されます。例えば几帳面な方は、作品を作るときにも、慎重に長さをはかり、完成度の高い仕上がりを目ざします。このような様子は、その方の普段の人付きあいや仕事ぶりにも同様にみられますが、本人には自覚がないことが多く、知らず知らずに疲れが溜まってダウンするということもあります。作業療法では、この傾向をさりげなく話題にして、自身の行動特性に気づくきっかけを与えるようにします。また、先ほどの調理の例では、お客さんに料理を提供するシェフにとっては賃金を得る「職業活動」となりますが、プライベートで料理を友人に振る舞うことが好きな人にとっては「趣味活動」となります。仮に上肢の麻痺のために包丁が持てなくなるという不自由さが生じた場合、前者では「生活の糧」に影響し、後者では「楽しみや生きがい」に影響が出ます。このように、同じ作業活動でも、その人にとって意味や価値は異なるのです。
 ひとは「作業」を行うことで生きる意欲や活力を得ており、作業療法では、このような人間の持つ本能的な特性を活かそうとします。作業療法士の仕事は、自分の経験と重なることが多く、その点が魅力であると感じています。