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教員リレーエッセイ

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支えることは、支えられること


2023年2月10日更新
 「誰かの役に立ちたい。支えたい。社会貢献したい。」社会福祉を目指す学生さんや対人援助職となった方の志望動機として、良く耳にするフレーズです。私もしかりです。
なぜ、このように考えるのでしょうか。自己肯定感・効用感のためなのでしょうか。
 高校生の頃、JICA協力隊としての海外ボランティアに憧れていました。世界には、つらく苦しい思いをしている人がいる、何か、自分にできることはないのだろうか、と。三度目の挑戦でようやくソーシャルワーカー隊員としてウズベキスタン国にある国際NGOへ派遣されました。
 現地の人とともに、同じものを見、食べ、感じ、同じ金銭感覚で、同じ暮らしを重ねました。夏40~50℃、冬-30℃の経験したことのない気候をはじめ、水などのインフラが不十分な生活環境で、支援活動どころか、自身が「生きること」で精一杯な日々でした。
 そんな中、NGOの現地スタッフや仲間、近所の人たちが声をかけてくれ、日々を支えてくれました。「支えに来たのに、支えられてばかり…。」と落ち込みました。実際、小さな私にできることは、ほとんどありませんでした。
 しかし、たった2年間でしたが、彼らとは、言葉や宗教、文化や歴史を超えた家族のような関係性がしっかりと築かれました。お互いを知ろう・理解しようとし、向き合い、大切に思い合い、些細なことでも具体的に行動する、し続ける。支援とは、相互の関係性であることを学んだ経験でした。
 海外経験を含め医療を中心とした30年間のソーシャルワーク実践を通し、様々な人のそれぞれの生き様とかかわってきました。専門職としてできることは格段に増えましたが、実感することは、教えられること、支えられることの方がはるかに多いということでした。
 世界とは、今、生きている、ここ、につながる、支え・支えられる多様な関係性です。このことを言語化し、形にすることが、私の生涯の研究テーマです。さらに、その研究(理論)と実践を結び付け、伝え、ともに考えてゆくことが、今の私が目指している教育の一つの方向性です。